痔というのは人間には宿命とも言うべき病気である。
直立したこと、座ること、排便がを我慢したり、排便時に座ったりしゃがんだりするためうっ血しやすいこと、刺激物を食べること、ストレスがあること、アルコールとタバコ、寿命が長い(医療がなければ平均寿命は20代になる)ことなどの理由があるだろう。
どれも動物はしない。
痔は人間だけにある病気なのである。
痔は2種類に大別できる。
循環器系と消化器系の痔である。
循環器系は血管による痔で、消化器系は腸・肛門の痔ということになる。
簡単に言うと、前者がイボ痔(痔核)、後者がキレ痔(裂肛)だ。
痔の種類としては痔ろうがある。
もちろん、病院では肛門科になるので、循環器・消化器を考える必要はない。
ここではイボ時について書いていく。
キレ痔の人は薬局へ、痔ろうの人は病院へ、すぐに行っていただきたい。
何がイボかというと血管である。
ひとつの血管が膨張(血栓による)したものと、多くの細い血管が増殖したものがある。
lこれを「静脈瘤(じょうみゃくりゅう)」という。
前者は一過性で薬で治る場合が多いが、後者は薬だけでは難しい。
肛門と直腸の境目を「歯状線」という。
内臓と皮膚の境目である。
この内側は内臓の直腸のため痛みがなく、外側は肛門のため痛みを感じる。
当然、痛みがなく、出血などもなければ自覚症状はないことになる。
歯状線の内側にできたイボ痔を「内痔核」、外側を「外痔核」という。
患者の多くは内痔核である。
内痔核にはステージが3つに分けられる。
小さな静脈瘤の段階、大きくなった段階、外にまで出た(脱肛)段階である。
脱肛になった場合は手術するしかない。
また、第2ステージでも、出血が頻繁な場合などは手術を勧められるだろう。
痔の手術はというと、簡単である。
日帰りでもできる。
が、地獄を見る。
筆者の実体験(日帰り手術)である。
まず、手術。
早朝、自宅で下剤によって便をできるだけなくす。
当然の処置である。
で、病院へ。
肛門を切るのではなく、肛門の内側の内痔核を切ろうと言うのである。
どこから切るかといえば、肛門側からしかない。
麻酔の後、思いっきり肛門を開く。
麻酔していても激痛だが、医師曰く、「麻酔していなかったら気絶する」そうである。
切っている時はチクチクとした痛みが走るが、その後は痛くない。
麻酔が効いているからだ。
その後に痛みが襲ってくるが、それはまだ序章に過ぎない。
手術が終わると、すぐに帰れるが、本来は入院すべき手術なのだと後で実感した。
普通の手術を考えてみよう。
普通は傷口を清潔にして、手で触れたりもしないようにするだろう。
が、肛門は違う。
切って、縫合することもなく、そのまま放置となる。
しかも、排便はしなければならない。
固いと大変だが、下痢になると最悪だ。
丁度良い固さの便になるように、下剤を調整して飲む。
毎日、練りハミガキ状をベストとした便を出さないといけない。
もうお分かりであろう。
切った傷口を便が毎日通過しようというのである。
出血もする。
通過時に傷口を擦り、あまつさえ便が摺り込まれるのである。
当然、激痛に苛(さいな)まれる。
最初はまだ良いのだ。
数日すると傷が治ろうとしてくるためか、毎日状況は悪化していく。
痛み止めがあるのだが、それが座薬である。
直接痛みに効くのは分かるが、入れるのはその痛い部分なのだ。
盲腸の手術後に痛み止めを切った穴に入れるだろうか。
痔の手術は入れるのだ。
座薬より指が痛く、指の指紋がこれほど擦れるものだと知ることになる。
他の薬もほぼ肛門からである。
が、そういった薬は麻酔も入っていて、浣腸のような形で1本ずつチューブになっているから、入れても痛くないばかりか、痛みが治まるので入れたくなる。
それが1月ほど続く。
その後痛みは和らぎ、数ヶ月経つと何事もなかったようになるが、地獄の数ヶ月である。
その間、刺激物やアルコールは摂れない。
子供のような食事をするしかない。
どういう風に排便するか、人によって違うかもしれないが、肛門を最後に閉じるはずだ。
それができない。
痛いからである。
しかも手術で思いっきり広げていて、括約筋自体も損傷しているのだ。
口内炎で食べ物が痛いなどというのは生易しい。
便なんだから。
ぜひシャワー付きトイレを利用したいが、水圧がかなり弱められるものでないと凶器になる。
大きめの洗面器にお湯を溜めて、やわやわと洗ってやるくらいが丁度良い。
手術か痔持ちか、かなり究極の選択ではある。
しかし、悪化すれば手術しかない。
カントン化するとすぐに切らなくてはならないから、余裕を持って肛門外科に行くべきである。
手術なので医師の技量によるところが大きい。
手術しても、再発することもあるという。
他の手術や手術しない注射による治療などもある。
ジオン(消痔霊治療)というのが平成16年から認可された。
注射で治すというものだが、効果がない人もいるし、再発する人もいるという。
どうするかは決断するしかないだろう。
もし、出血しているなら、一度肛門科を受診すべきである。
痔なのか、直腸ガンなどの他の病気なのか診断してもらった方がいい。
直腸ガンとなると、命に関わるのだから。
